「バトルフィールド ハードライン」マルチプレイヤーとコンセプトアート
先日、盛況のうちに終了した「バトルフィールド ハードライン」のオープンベータでは、ファンの皆さんに新しいホットワイアとハイストのモードを含む、3つのマルチプレイヤーマップとモードを体験してもらうことができました。
先日、盛況のうちに終了した「バトルフィールド ハードライン」のオープンベータでは、ファンの皆さんに新しいホットワイアとハイストのモードを含む、3つのマルチプレイヤーマップとモードを体験してもらうことができました。
今回は、「バトルフィールド ハードライン」のクリエイティブディレクターを務めるIan Milhamと共にゲームのアートスタイルについてお話したいと思います。
「バトルフィールド ハードライン」は3月19日に日本発売が予定されています。
「バトルフィールド ハードライン」のアートスタイルについて説明してもらえますか?
最大限に印象に残るようなリアリズムを追及しています。重視しているのは本物に即していることよりも、本物に感じられることです。ゲームのマップは現実の場所を元にしていますが、無理に現実に合わせようとはしていません。あくまでプレイヤーにわかりやすく、目標に集中でき、それでいて細部まで作り込まれていて、マップを隅々まで探索することに意味のあるマップにすることが私たちの目標です。
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「バトルフィールド ハードライン」のアートスタイルに影響を与えたものなどはありますか?
私達はマイケル・マン監督の作品を数多く観ました。『ヒート』、『コラテラル』、『ザ・クラッカー/真夜中のアウトロー』、『マイアミ・バイス』などですね。映像としてわかりやすく、そして映画としての枠組みの参考にできました。世界の雰囲気と色付けに関しては、作家・脚本家のエルモア・レナードと彼の原作を元にした映像作品『JUSTIFIED 俺の正義』や『アウト・オブ・サイト』、『ジャッキー・ブラウン』などから、強い影響を受けています。
「バトルフィールド ハードライン」のコンセプト立ち上げの際の思い出は何かありますか?
これだというスタイルにたどり着くまでに長い時間がかかりました。現実を舞台にしたゲームを作るのは、作り物の世界を舞台にしたゲームを作るより簡単だと思うかもしれませんが、実際にはより大変でした。誰でも現実に対しては繊細な基準と感覚を持っていて、少しでも違和感があればそこで現実ではなくなってしまいます。ファンタジーやSFでは許される差異が許されません。
そのため、何度も描き、組み立て、そこにさらに描き、という試行錯誤を行い、そして現実との違和感を抱かせない正しいサイズや外観を持ちながらも、コンセプトとして使える様式性を持つ参考資料を集めて回りました。
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マルチプレイヤーマップのデザイン工程について話してください。どんな基本を頭の中に置いていましたか?
最初は、雰囲気とライティング、インスピレーションだけをコンセプトに描きました。マップの完成までに長い長いプレイテストと修正の繰り返しが待っていることが初めからわかっていたためです。何カ月もレイアウトとテストプレイ、そして再レイアウトの試行錯誤が繰り返され、その中で経路やランドマーク、フローなどの要素が煮詰められました。それらの要素がおおよそ固まったところで、アートの作業が開始されました。
次に最初に行ったのは、マップの可読性、つまりわかりやすさの確認です。例えばチームメイトからはぐれた状態で、マップのどこから出撃しても、今どこにいて、どちらに何があるかすぐにわかるか、ということです。ここでプレイヤーをガイドするためにライティングとランドマークを活用しました。そこまで完成してから細部の作り込みに移り、マップの仕上げとなります。
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プレイヤーをマップのストーリーに引き込む上でのアートディレクションの役割を教えてください。
ストーリーは本当に最後の工程となります。例えば「Bank Job」では、陽動として正面玄関が爆破されていたり、裏口の警備が既に倒されていたりする様子から、ラウンドの開始よりも前に襲撃の第一波が行われていたことがわかるようになっています。また、マップの各所に現代カルチャーを反映したアイテムや看板などを配置し、単なるマルチプレイヤーマップではない、現実の場所として感じてもらえるようにしています。
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マルチプレイヤーマップで注目しておくべき細部の作り込みはありますか?
現代の街が舞台ということで、たくさんの看板やグラフィティアートが登場します。コンセプトアートを担当したアーティストの1人にストリートアートで活動していた経験があり、熱意を込めて限りなく本物のアートを目指してくれました。店の内装や外の壁のグラフィティアートには、制作チームにまつわるネタやジョークが散りばめられていて、特徴的なスタッフだったり、VisceralやDICEの過去作のキャラクターだったり、その他さまざまなものが取り上げられています。
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普段の一日の仕事がどんなものか教えてください。
開発のどの工程にいるかにより変化します。私達のアートチームには熱意にあふれ、非常に優秀かつ多様性に富んだアーティストが揃っていて、方向性が一度定められると、何の指示もなくとも作業が着々と進んでいきます。私は必要に応じて、できる限り小まめなレビューを行うようにしていますが、それも必要ないほどの優れたアーティストばかりです。
私がどれだけ多くの時間を「アーティスト以外」と過ごすことに割いているか知って驚く人もいるかもしれません。優れたゲームでは、あらゆる要素がかみ合っていなければなりません。私は頻繁にデザイナーやエンジニア、その他の開発者と一緒に仕事をし、彼らの仕事にアートがきちんとマッチし、同時にアートからの要望がゲーム全体に反映されるよう調整に務めます。
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いつも気にかけていることはありますか?
バトルフィールドの名にふさわしい仕事をすることです。バトルフィールドシリーズに関われるのはとても光栄なことで、私達開発チームはそのことよく理解しています。ファンは、このゲームがその名にふさわしい優れた作品となることを期待しているでしょうし、私達はその声に応えたいと思っています。
ゲームを作る道に進んだきっかけは何ですか?
私は元々イラストレーション専攻だったのですが、90年代半ばにゲームのメディアがCDに移行したことで、ゲームに収められる画像の容量が一気に大きくなりました。背景にも絵が用いられるようになり、その絵を描く仕事で私はゲームの制作に関わるようになりました。その頃のアートチームは小規模だったので誰もがあらゆるパートを担当することになりました。そのおかげで、さまざまなアートの分野がどのように連携するか理解を深めることができ、やがてアートディレクター、そしてクリエイティブディレクターとなるための素地を得ることができました。チームの規模は遥かに大きな物となりましたが、チームとして働く上での基本は多くの点で変わっていません。
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これまで手掛けた中で最も誇りにしている仕事は何ですか?
どの仕事もそれぞれ異なっていて特別なので難しい質問です。言えるとすれば、「バトルフィールド ハードライン」が私の関わってきた仕事の中でも、圧倒的に大きな仕事になりつつあるということでしょうか。多くの人に楽しんでもらえ、素晴らしい時間を過ごしてもらえるものを提供できること、それが私の仕事における誇りです。